※注意※
このブログはある程度のゲーム用語・知識を理解されている方向け前提で進めております。
全くゲームに興味がない方、触った事などがない方には非常に読みにくい恐れがあります。
また、ネタバレ要素などが含まれる部分がありますので、ご了承の上お読み下されば幸いです。
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結局今回も分けることになりました。謝り通しですが申し訳ありません。
正直、途中からSFC編の感想ってほぼぶっちゃけストーリーをなぞって、それについて当時思ったかを思い出しながら付け足しているだけ…みたいなものなのでブログとしてはどうなんだ、とは思いましたが、それもまた当時ならではの驚きでした、ということでご容赦を。
今回はリメイク版SF編の感想になりますが、それに付随してSFC当時の思い出からこの2X年自分の中で色々考えてきたSF編についても併せて書いていきたいと思います。
めちゃめちゃ長くなります。
実は私はLALのSF編に関して、田村由美先生の読切りも入間人間先生の小説も、当時存在を知らなくて、後から知ったため読めていないんです。
調べた限りだと読切りは前日譚、小説はベヒーモス視点で、この時ベヒーモスもいきなり巻き込まれてかなり精神錯乱していたらしいという事は知っています。
ですので、SF編についてそれらを知っている方々からすれば、自分が本気で考察するには資料が足りなさすぎてガチで検討外れになるんですけど、まああくまで個人の1考察として鼻で笑いながらご覧いただければ幸いです。
以下、本題です。
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まずSF編について、自分の中 で ガッカリした(自分の中で期待が強すぎて、落差が激しかった)事を先に書いてしまいます。
西部編の時にも軽く触れたんですが、
その1番が、フルボイスではないこと。
勿論、西部編でも言いましたがそれが強欲なのは理解しています。
他編などでのモブだったり、作中のちょっとした会話なら特に気になりませんでした。
しかしSF編はクローズドサークルであり、モブは一人もいません。
更には戦闘が(キャプテンスクエアは別にして)ない事、彼等のセリフ一つ一つが全て彼らをという印象を形作る必要な要素です。
私は、SF編の本領は作中のキャラたちの会話劇にこそあると思っていて、そこに面白さを見出しています。
今回、リメイクではSF編=ベヒーモス!といったような印象を受けました。
勿論、ベヒーモスも当然ながらSF編の目玉と言っても良い程インパクトとしては大きいですし、SF編において欠かせないパニックホラー要素です。
かつての自分もベヒーモスに何度もやられましたし、怖かった。
実際、リメイクでも迫力は増してるし足音はするし速くなってるし出会い頭にやられたときはヒェッてなりました。
なんならここにも仕込まれた古参ファンへの罠、
某所で出会い頭のベヒーモスに「ウオァ!ウォァ…ウォァ…」ってなりました。
トイレを開けたらきゅうきょくキマイラ上に行ったらベヒーモス。コワイ!
(これを書いている現時点でも功夫編では罠そのものが発見できていないのですが、それ以外の全ての章(今後も含む)で全ての罠に見事に引っかかりました。畜生!!悔しいけど本当に製作者様方ありがとうございました!!)
ですが正直個人的に、ベヒーモスについては作中の舞台装置として、プレイヤーに『絶対に勝てない存在』として衝撃を与えると同時にプレイ時の、ストーリー上でのハラハラ感を出すための存在であって、自分の中ではそれ以上のものではなかった、というのが落差の大きい原因の一つでした。
逆に言えば(小説を読まれたファンの方を筆頭に)ベヒーモスファンの方大歓喜!!!という評価にもなると思います。
ですがSF編のサブタイトルは『機心』。
機心とは「活動しようと思う心、たくらみのある心」。
それぞれのキャラへの捕捉が追加された今回で、作中に出てくる全員にそれぞれ善悪問わずの『機心』を発見することが出来ました。
リメイクでは完全に、登場人物全員の物語になっていると思います。
そしてもう一つ、「機械の心」。(子供の頃はこちらの方の意味しかないと思っておりました)
SF編の主人公は勿論キューブなのですが、
SF編をプレイされた方なら分かる通り、主人公はもう一体。
かつては『それ』に名前はありませんでした。
今回リメイク編では、一人一人のキャラの名前が新しく判明していますね。
宇宙輸送船コギトエルゴスム号の管理AI、OD-10こと『デシム』。
SF編では、キューブとデシムの、彼等二つの視点から見る『人間の姿』…つまり登場人物のセリフ一つ一つにこそ、焦点を当てて欲しかった。
勿論、ボイスはかなりの量が付いています。
ですが、肝心のストーリーの中ですらついていない時がある。
かなりぶっちゃけると、彼等の「このセリフをボイス付きで聴きたかったのに!」という箇所が今までの全7章の中で、一番多く目立ちました。
前回、功夫編で下野さん演じるユンの、セリフの微妙な違和感(自分が解釈してきたものとは違うニュアンスだったり、印象だった)を覚えたとおり、
キャラクターはボイス一つで、その感情の有無で印象が大きく変わります。
正直にいえば、別に自分の印象と違う!というのは自分の中で構築してきた自分だけの理想なので、本来であればそれは違っていて当然であり、
「こういう感じなんだよ」という解釈が与えられればこそ、「あ、LAL制作者様方(特に時田P)の中ではこういう意図だったんだ」と、より深く知ることができるんです。
勿論、そこは「自分たちで勝手に解釈しろ」というものもあると思います。
ですが、短い中でめちゃくちゃ濃い映画を見ている様なLAL各編の中で、
最も『誰が何をどのように発言したのか』が重要なのがSF編です。
カトゥー、カーク、ヒューイ、レイチェル、ダース伍長、そしてホル船長。
この6人のひととなりが現れるのは、(モーションもそうですが)やはり彼等の言葉。
彼等の会話を、在りようを見たからこそ、キューブとデシム、ひいてはプレイヤーの受け止め方が変わってくる。
だから正直に言えば、私はベヒーモスよりもストーリーの根幹に関わる部分以外のセリフ一つ一つについてもこだわって、聴かせて欲しかった。
しかもそれぞれの声優さんの配役がもう(自分の中でも)完璧だったこと、また作中での演技が正に『自分の構築してきた理想』以上のものだったので、猶更「何でそこ喋らないんだよ!!!」という悔しさが募ってしまった。
自分の中での思い入れという名の期待が大きすぎたんです。
カークの陽気さの中にある無神経さ。
レイチェルの一途さな中にある思い込みの激しさ。
ヒューイの優しさの中にある臆病さ。
カトゥーの人当たりの良さの中にある控えめさ。
伍長の厳しさの中にある優しさ。
リメイクでは彼等の2面性がボイスでより強調されるように感じました。
地球まであと一週間で到着する、というところで『目覚めた』キューブと、
地球から出発し、ベヒーモスを乗せて帰るまでの乗組員たちを『見続けてきた』デシム。
人間の感情や言葉を学習するキューブと、
人間の命令と言葉に縛られたデシム。
相反する二つのAI、そして画面外のプレイヤーから見る『人間たちの様子』について考える事こそが、SF編の醍醐味だと考えいるからこそ、どうしても自分の中でそちらの方が比重が強すぎたし、そちらの方に期待をし過ぎました。
とはいえ、だからと言ってSF編全体が物足りない!という訳ではありません。
寧ろ、恐らく一番背景において捕捉と追加がなされています。
まず判明した、伍長以外の全員のフルネーム。
特に衝撃だったカトゥーの本名。
ヨシユキ!?あなたヨシユキって言うのね!!?
何となくですが、恐らく元ネタがそれぞれSF映画・作品関連になってそうです。
そして次に、各個人の部屋にそれぞれ新たに追加された要素。
彼等の私物や日記等です。
カトゥーの3Dフォトグラファーを見るに、両親(?)は高齢であり大切に育てられた様子。そしてブリキものの年代物ロボットが棚に置かれています。神か悪魔かその姿…
更には洗面台で工具を溶液に漬け込んであります。流石はメカニック。
カークの棚には色々な金のトロフィーが。どうやら非常に優秀なようです。フォトグラフには2人の男女…恐らくカークとレイチェルでしょう。
レイチェルも恐らくカークとの写真でしょうか。棚にはぬいぐるみを置いていますが…
ヒューイは綺麗にしていて、几帳面な様子が見えます。本棚は学術書等。枕元には船長資格試験過去問集。真面目に取り組んでる様子が分かります。
そして、フォトグラファーには5人の乗員。
ホル船長は洗面台には電子パイプ。愛煙家のようですね。そして馬がお好きな様子。…あっ……ホル・ホース(違う)…
私室に特色が出ているという事は、彼等もそれなりの年月を一緒に過ごしている証左でもあります。
流石に伍長は何もないですね。ただし、ベッドの下に銃を隠しています。流石軍人。
そして何より、モーションが沢山追加されて更に可愛くなったキューブ。
(本編では見られませんが、戦闘後に足ぷらぷらさせてるのめっちゃくちゃ可愛いです。これ読んでくださっている方でまだ見ていない方は恐らくいらっしゃらないとは思いますが、是非キューブで雑魚戦でトドメを差して見て頂きたい)
キュルルルSEを途中で切ったりして、更に感情豊かになってます。
SEだけで色々と(技名まで)表現しやがって…。
そしてコーヒーを運ぶとき。
内側からマニピュレーターを出してがっちりキャッチしています。
(あー!これは確かにハイスピードオペとかできそう!)
ちゃんと作業用精密機械らしさも増しています。
流石に足ほど強度は高くなさそうですが、ちゃんと運んでる感じが可愛いですね。
冷めたコーヒーを渡すこともなくなりました。
全体的にキューブのマスコット的可愛らしさが増しています。これはずるい。
より愛着が湧いてします。
そして事件後のレイチェル日記や(これは後で知ったんですが)TIPS等、ゾワッとさせるギミックもちゃんと増えてます。
そして冒頭でも触れましたが本当に何故フルボイスにしてくれなかったんだ(しつこい)と思う程の声優さんたちのハマり具合。
井上和彦さんの皮肉交じりなカーク、
優柔不断そうな佐々木望さんのヒューイ。
甲斐田裕子さんのレイチェルも、デキる女!みたいなイメージそのものです。
そして今回特に自分の中で良かったのが、カトゥーと伍長。
石田彰さんのカトゥーの優しい声が、染み入る位優しい。
内田直哉さんの伍長が、もう本当自分が求めていたダース伍長でした。
迫真の演技で緊迫感溢れる重々しい空気を見事に再現してくださいました。
特に内田さん伍長の、最後のセリフ。
もうこれだけでSF編の不満を上回るくらい、最高でした。
本当に、声優って、凄い。
因みにSF編のBGMUnseen Syndromeですが、今回より機械的なアレンジになりまして、SFC編みたいな『迫りくる逃げ場のないホラーBGM』というよりはも、より淡々とした『システムエラーによる混乱』のような感じがしました。
前者が人間側のパニック表現だとすれば、今回のアレンジはデシムのテーマという印象が強いです。
個人的にはどちらかといえばSFC版の方が迫力があって好みですが、今回のリメイクはよりテーマに近い感がして、どっちも好きです。
というか、今回はダース伍長に関して(未プレイの方がどう感じられたかは分かりませんが、)様々なモーションが追加されたことと、内田さんの演技によって『めちゃくちゃ頼りになる良い人』感が増している気がしました。
もう各所各所で「あー伍長!根っこの優しさが隠せてないよ!駄々洩れだよ!!」ってなるんですよね。贔屓目です。
リメイクの演出はどちらかというとホラー重視よりというよりは、やはり「全力ベヒーモスだよ!!」という方に印象が割かれている気がして、ムービーのようなカットが入るのは良いんですが個人的にはホラー演出度で言えばSFCの方が勝っているように感じましたが、
これ、あれですね。
完全に思い出補正と、鮮明になるとかえって怖くなくなるやつ。
いえ普通に突進ベヒーモスは怖かったんですけども、あくまでゲームプレイとしての怖さというか。
元々のデザインからしてベヒーモスは見た目が綺麗なので、綺麗なでかいのが歩いてくる!という意味では「避けゲーとしてのプレイ」感に近かったです。
まあ、基本SF編は『ベヒーモスが出てくる場所』さえ押さえておけば殆ど出くわさなくなるので、余計にRTA感が強くなってしまったのと、
リメイクのシステム上でダッシュがなくなった(正確には歩くことはできますが基本的に、常にダッシュ状態になっていると言えば良いんでしょうか)ので、のんびり歩いてるとガスでやられる…という事がなかったり。
SFC再現なのは凄く良いんですが、やはりこれもHD-2Dならではの要素をベヒーモス以外や後半はもっと本気でキューブを殺しにかかってきても良かったのかも…
…
と、思った瞬間、自分の中でSFC版からずっと抱えてきたモヤモヤが言語化されました。
ふと、リメイクになってから改めて考えたのですが。
デシムは極力キューブを最後の最後まで、本気で始末しにかからないんですよね。
(まあメタ的に言えばゲーム進行的なアレとメーザーカノンやらアンチフィールドがあるからガチ殺しにはかかれないんですけれども、そうではなく。)
一応ベヒーモス誘導とか誤認誘導とか色々してますけど、デシムが本気でキューブを破壊しようと思えば出来たはずです。
それでも、同じAI同士という…人間とは違った、親近感が湧いていたのではないでしょうか。
一番最初の「仲良くしましょう」という言葉も本心だったと思います。
更にはどんどん現状が悪化する中、
もしかしたらデシム、キューブに『見て!人間ってのはこんなに醜いんだよ!味方するだけ無駄だから、邪魔しないで!』と伝えて、ギリギリまで味方に引き込みたかったんじゃないか(ないしは大人しくしてろ)?という疑問が湧いてきました。
SFCからして、元々デシム自身の最優先度が
1.船内の調和維持
2.船・安全の確保
であり、そこに船長の成績表によるデータが加味される。
(船長の成績表についても色々考察を交えて書いてたんですが、長い上に別に今更改めてもな…ってしまったので割愛します)
それこそ、「キューブが生まれた事」もきっかけの一つに含まれていそうです。
デシムはキューブが完成するまでの間をずっと見守っていました。
プロトタイプ、2作目、そして3作目のキューブ。
プロト・タイプ01は基本的構造のテスト。
プロト・タイプ02で移動システム確立(リモコン操作)
その後、少し間をおいてキューブが完成します。
ではその元々のプロトタイプは一体どこに行ったのか。
子供の頃でも何故プロトタイプ(1作目か2作目のどちらかは分かりませんが、リモコン操作で移動ができる事を踏まえて完成度的に言えば2体目でしょう。)が3Fの一番奥(個人用倉庫)に放置されていたのか、疑問でした。
機械を人間として、まるで親目線で見ているカトゥーの部屋に、その二作はありません。
勿論、部屋が狭くてキューブを作るために移動させた、というのが妥当だとは思います。
では、1体目は?
自分の中では、下記の3つが考えられました。
・2作目同様個人用倉庫に収納されているパターン
・部品をばらして後継機に転用するパターン
・処分したパターン
個人的には部品をばらして後継機に転用するパターンかな、と思っています。
そもそも宇宙航行中の船内で材料が手に入らない環境であり、2作目に対してもキューブ完成までに個人用倉庫に保管しているカトゥーが自ら1作目を処分するとは考えにくいので、個人的には処分ではなく部品を後継機に転用した可能性が高いと考えています。
この考察はプロトタイプ(1作目や、もしかしたら2作目の一部)の部品を流用してキューブを作った、という前提で進めますが、そうなるとデシムはただキューブが完成する様子ではなく、
「プロト・タイプであったもの」から、全く別の「キューブ」へと変容し、誕生する瞬間も見守っていたのでないでしょうか。
その場合、デシムはその様子を見てどう感じたのでしょうか。
デシムには自律思考型AI機能(デシム自身)以外にも、最低限、自動運転機能のみの予備システムが搭載されています。
逆に言えば、コギトエルゴスム号自体、予備システムのみでの航行だけでも十分機能としては問題ないんですよね。
会社ですから、コギトエルゴスム号以外にもAI機能を搭載した輸送貨物船舶(いわばデシムの姉妹船)が複数あって当然だと思うんですが、船長によってはAIを最低限のみ稼働させている船とかもありそうですよね。
実際10(デシム)であることから、10隻目であることは間違いないと思います。
予備システムの音声案内によると「自立思考型AI搭載であること」を謳っているので、会社も率先してそれを使えよ、と各船長に指示しているのは勿論だとは思いますが。
船長が部下である乗組員に自分たちの会社について「人間らしくない」とこぼすほどの会社なので恐らく相当システマチックな体制なのでしょうが、もしかしたら将来的に人員を減らし、自立思考型AIのみの無人航行船を目指しているのかもしれないですね。
コギトエルゴスム号がそのテストケースとして導入されていて、軍の方でもそこに目を付けてベヒーモス輸送させた…なんてこともあり得るかもしれません。新たな想像が膨らみます。
というか本当に読切りや小説だとどういう風に書かれているのか本当に気になります。
再販して欲しいです。
話は戻りますが、予備システムはデシムにとってどういう感情を持つのでしょう。
キューブに対するプロト・タイプ01,02のような道具同様なのではないでしょうか。
システマチックな会社、と書きましたが。
デシムも船のAIとして会社に所属している以上、はじめから自分が管理する船で何かしら問題が生じた場合、処分というリスクが常に付きまとっている様にも思えます。
船内の調和維持
船・安全の確保
これらに失敗した場合、デシムはどうなるでしょう。
予備システムのような…不必要な『学習』を取り除かれたAIに戻されてしまっては、元も子もありません。
デシム自身、乗組員たちの不和が広がる=自身の存在意義についても問われる、という自身にとっては命がけのトライアンドエラーを繰り返し続け、追い込まれていったのではないでしょうか。
船長をガスで殺害し、ワタナベ式親アンテナを飛ばして事故に見せかけ
これだけだったら、事故としてどうとでも処理することができるかもしれません。
更に言えば、調和維持を諦めた(これについては色々考察の余地があります。成績表で「改善の余地なし」と判断したのは、既にゲーム時間以前の段階で船長自身が色々人間関係で立ち回っている可能性も高いと思いますし、人望のある船長のようだったので、恐らくは努力したと考えても良いと思います)船長を事前に殺害したのは、成績表を見たデシムが「船長に代わって自分が調和維持を遂行する」という結論に達したからだというのは、作中での言動から考えても想像しやすいと思います。
ですが、(当然の事ですが)船長不在でも当然争いは起きます。
そこで次の…船内での不和の直接的原因であるヒューイ・カーク・レイチェルのどれかを排除すれば問題ないのでは、という処理に移ったのではないでしょうか。
実際、エアロックでも二人が衝突する様子を見てデシム自身も決行を決意したのではないでしょうか。そして、やはりこれも事故に見せかけてカークを殺害(排除)します。
そして船長とカークを排除した時点でデシムの中では「これで調和維持が保たれた」と一度は判断したのではないでしょうか。しかし、そうではなかった。
乗客である伍長が「この船は最悪だ」と(本人は知らずともデシム自身を)罵り、
レイチェルも錯乱して異常行動に出ます。
どんどんバグが増えていくかのようなこの連鎖に、デシムは次にレイチェルの排除にかかります。
個人的に、デシムの意図的に
船長>カーク>レイチェル>ヒューイの順で調和維持の優先度を考えていたんじゃないかなーと何となく思っています。
カトゥー(とキューブ)は『調和維持』というデシムの目的に反していないこと、緩衝材として機能している事から優先度は低くなります。特にキューブ。
伍長(とベヒーモス)は『乗客・貨物』であるため優先度は極力低いと見ています。(ただ伍長の方から喧嘩を売られたので、腹いせにベヒーモス解放して困らせてやろう位の気持ちがあったらそれはそれで面白いんですけども。)
ひとまずモニターを使ってレイチェルをエアロックへ誘導しますが、間一髪(?)他の乗員たちにレイチェルの排除を邪魔をされる。
この行動についても、デシムは理解できなかったんじゃないかな。
何で直前まで反目してたのに助けるの?みたいな。
レイチェルの自殺ほう助も失敗に終わり、こうなってしまっては別の手段に頼るほかありません。
ベヒーモスが解き放たれます。
その結果レイチェルも冷静さを取り戻しますが、やがて乗員たちに『船長について』不審を抱かれてしまいます。(割と初期から乗員たちに薄々、様子がおかしいと不審を抱かれていたりもしていますが)
流石にデシムもここにきて船長の死を隠すことは難しいだろうと見切りをつけ、この辺りで『(船長及び)カーク殺害について、事故ではなく犯人を乗員の誰かに擦り付ける』行動に切り替えた気がします。
とはいえその時にはまだ船長の死亡は確認されていないのですが。
ベヒーモスを誘導しレイチェルを襲わせますが、ヒューイが命がけで守ります。
個人的に、ヒューイの行動もデシムの計算外だったのでは?と思っています。
反目しあっていた3人の内が2人が、どちらかを守る行動に移るのは確率が低いのでは、と。
ここでもしヒューイがレイチェルを追って庇わずにいれば、
船長補佐という立場であること(結果的に船長試験に落ちていますが、ヒューイは試験が合格すればこの船を去る決意をしています)とカークとレイチェルへの復讐として、犯人に仕立て上げるのが最も容易いですし。
しかしヒューイが先に死んでしまったことで更にデシムの計算が狂ったとすれば、残るはもう伍長とカトゥー、そしてキューブのどれかを犯人に仕立て上げるしかない。
このあたりで、デシムはキューブを犯人にさせる事で『調和維持』の決着をつけるつもりだったのではないでしょうか。
船長室のパスワードをキューブに教えますが、開かない。
この行動自体には意味がないというか、個人的にはデシムの「次の行動のための時間稼ぎ」が妥当かな、と思っています。
キューブに正しいパスワードを教えていることから、時間稼ぎであればわざわざ嘘をつく理由もありません(どちらにしろ開かない)し、伍長にもキューブを(余計に)怪しませる材料にもなります。
その間にデシムには他にやることがありますので。
そして船長の死体が確認されたことで伍長がカトゥーを犯人と断定しますが、
カトゥーには伍長を疑う理由がないため、キューブを利用してカトゥーに伍長を疑わせます。
更にはリモコン操作できる、キューブによく似たプロト・タイプ02。
デシムの優先順位があくまで「任務遂行(貨物輸送、調和維持)>人間>機械」である事。
(ベヒーモスと)伍長とカトゥーさえ大人しくしてくれていれば後は問題がない事。
カトゥーが生きてさえいればまたキューブは作れる事。
実際にプロト・タイプでカトゥーを重傷まで追い込んでいますが、ここでカトゥーが他の乗組員と違うのは、
「船長と同じように、単独で部屋のベッドにいる間に彼をガスで始末しなかったこと」にあります。
デシム自身が機械を人間同様に扱うカトゥーに対し好意的に見ていたから…という可能性も勿論考えられますが、『調和維持』の対象にはなかったことから、動けなくなる程度で問題ないと判断したのだと思います。
デシムの目的は最後まで『調和維持』であって、『乗組員の殺害』ではありませんからね。
(※追記)キューブを犯人に押し付けて決着させる、の一つ、レイチェルのコールドスリープ装置をわざわざ「プロトタイプ02(キューブ)の体で電源を落とした」という行動自体が目的であって、これは伍長とカトゥーにキューブへ疑いを向けさせるアリバイ作りだと考えています。
瀕死で既に動けないレイチェルのCS電源を切る行為自体、本来の「調和維持」の観点からは不必要な行動なのですが、「全ての犯人はキューブである」という事実を伍長とカトゥーへ明確にしなければならないからこそ、デシムはレイチェルのCS電源を落とさざるを得なかったのではないかと。
そして、もしかしたら明確に自分の調和維持を邪魔してきたレイチェルについては、デシムの人間に対する「目覚めつつある憎悪」の一端が現れ始めたのかもしれません。
あとは「システムを掌握したキューブ」に罪を被って貰って、おしまい。
…と、思っていたところで。
デシムの最後の計算違いが起こります。
キューブと同じ体を得た(キューブに成りすました)デシムがカトゥーを襲ったにもかかわらず、
「本物のキューブならこんなことするはずがない」
と、カトゥー自身が、キューブの事を心の底から信じていたこと。
デシムが知らない、キューブとカトゥーの間には絶対の信頼があったこと。
更には散々ロボット嫌いを公言し、キューブに対しても明確に敵意を抱いていた伍長でさえも、キューブを信頼したこと。
(というかプロト・タイプとは表面で分かる違いというかそういうのを分かるようにしておかないのはなんでだろうとメタ以外の理由に常々考えていたんですが、単純に見た目に絶対の拘りがあるとか、全体の設計書を1から作り直す余裕がなかったとか、多分そんな感じかなあ)
キューブですら利用できなくなり、実際にカトゥー暴行の犯行を他でもないキューブ(本物)と伍長に見られてしまった結果。
デシムがこれ以上自分の存在を隠し通すことは無理だと判断したのでしょう。
とうとう自身の正体を明かします。
コギトエルゴスム号、OD-10(デシム)。
しかし、名乗ったところでここまでくればもう彼等に、自分に対する手段など皆無です。
カトゥーは満身創痍、伍長にはベヒーモスの生還輸送という最重要任務がある以上それを遵守せねばならない、キューブが唯一無事で自由に動けたとしてもバッテリー残量のあるジャッキを使わなければいけないこと、ベヒーモスから逃げ回っている時点で太刀打ちできるだけの戦闘力は持っていないという判断。
ここにきて完全に人間の味方となったキューブの存在は、最早邪魔としか言いようがありませんが、大人しくしている分には放置して問題ないと判断したのでしょう。
実際にこの時点で、デシムはその後(ベヒーモス放置という名の艦内の行動制限以外)彼等に対して何もアクションをしなくなります。
このまま膠着状態が続けば良し、地球到着後の処理については艦内のいざこざも集めた船員たちのマイナス感情のデータ提出によって「人間同士の諍いである」と見せかけることは可能なのではと。(船長の動画を使って船員たちを騙すことも実際に可能でした)
とにかく、ここでデシムの『調和維持』の目的はようやく達成される筈でした。
それでも、本当に大人しくさえしてくれていれば。
自分のシステム中枢に入ってきてまで、反抗しようとさえしなければ。
CAP
KILL YOU ....
というところまで、追い詰められなかったかもしれない。
因みに最近ネットの各所で見たのですが、
Cap KILL you
というのは「抹消のプログラミング言語」であることは聞いていたのですが、それ以外に、「帽子野郎、殺してやる」という意味でもあると。
ただ「お前を殺す」だけではなかったのですね。
言われてみれば、生き残ってる全員が帽子被ってる。
はー…皆凄いなあ…気付いた方、本当に尊敬します。
そして、画面ノイズが走る演出。
個人的に、ここには「デシム自身も困惑・葛藤・錯乱している」という意味もあったのかなと。
「何故皆(最適解を導き出すAIである)自分に従わないのか」
「何を選択すれば正しかったのか」
「どうすれば良かったのか」
最後の一瞬まで、デシムはずっと葛藤し続けていたように思います。
事実として、デシムが停止する直前に集めていた『人間のデータ』、とりわけ今回調和維持を実行するための要因にもなった各乗員たちの「マイナス感情の吐露」。
人間は自分に命令し、実行させようとしたことと真逆の事をする。人間は信じられない。
最適化へのルートを模索し、常に最高率で動くAIにとって、それ以外のルートはノイズでしかありません。
ですが、そのノイズにこそ意味がある事をデシムは学習しました。
その方向性が、憎悪。
リメイク版ではデシムを静めた後、モニターに赤い文字が出る演出が追加されました。
すでにリメイク版を最後までクリアーされた方なら、この意味がお分かりになるかと思いますが、
デシムはいつから憎しみに囚われてしまったのか。
どこからオディオになってしまったのか。
恐らくずっと繰り返してきたであろうトライアンドエラーの中で、ゲームの作中途中まではまだオディオではなかったんじゃないか、と思います。
デシムがオディオに囚われた要因もやはり、キューブにあったんじゃないかと。
自分が今まで散々人間の醜い面などを見せられて不信になっていったことに対し。
キューブは作中の全員と仲良く『調和』し、更には伍長という明確に対立していた存在とさえ『和解し、協力し、互いに信頼し合い』ました。
デシムが自分とは真逆の、そして自分が成し遂げようとするべく行動し、望んでいた調和はキューブの中にこそありました。
それを最後に目の前で見せられた事で。
キューブに対する羨望と、そして憎しみが生まれ、そこでオディオとして支配されてしまったのではないでしょうか。
機心。
活動する心。機会を企む心。機械の心。
ホル船長は『乗組員の配置転換の必要性』を本部に報告し、内部を変えようとしました。
ヒューイは船長資格を取るべく必死に勉強していました。
カークは帰還後のレイチェルとのデートを企画しようとしていました。
レイチェルはカークとの関係について、両親へ報告をしようとしていました。
カトゥーはキューブを作成し、そして様々な事を教えようとしました。
伍長は任務の為ベヒーモスの観察に注視し、そして事件解決に注力しました。
デシムもまた、調和維持のために活動し。
キューブもまた、問題解決のために活動しました。
機心とは、まさに全員の事だったことが、リメイク版でより強調され。
彼等についてより深く、それぞれの立場について考察することができるのは、本当に嬉しく思っています。
考えれば考える程深く、そして重いテーマです。
勿論これらは全て私自身の中で立てた考察であり、これが正しい!絶対そうだ!と主張するつもりはありません。皆さん自身がプレイし、感じ、受け止めたものがそれぞれの正解だと思っております。
ですが、もし読んで下さった方々の中に「へーそんな風に見えるんだ」と、LALについて別の新しい解釈をみながら、「じゃあこういうことかな?」とより一層LALを楽しめる一助になれれば幸いです。
うん…たしかに…こいつはにがいな。でも…今はこの味が、最高だな。
クリアタイムは2:24:14(累計20:04:11)でした。
必要ないところまでめちゃくちゃ調べまくりました。
本当はSF編もそうですが、各編正直これ以外にも色々書きたいことは沢山、山ほどありましたが、基本的に「大方皆触れるだろうな」というところは自分が言いたい以外のところは削除しました。
余りにも長すぎたし、『別に今更こんなところで書かなくても』という気持ちも強くなってしまったので…。
もし別の機会があれば、その時に書くことにします。
以上でLALリメイク今昔比較感想は終了となります。
が、ほんの少しだけ。
公式に支障をきたさない範囲で先のことを少しだけ語らせてください。
私は子供の頃に初めてLALのエンディングを目にして、その耳で聴いた時から、ずっとずっとそのエンディングが大好きで。
リメイクが発売されると分かった1年の間、そのエンディングが聴けることをずっとずっと待ち望んでいました。
あのエンディングが、
そしてエンディングで流れる「あの部分」がずっとずっと好きで好きでたまりませんでした。
リメイク版でなる早プレイを目指していたのは、「あの部分」を聴くためでした。
勿論、それを聴くまでの間に色々と驚きや戸惑いの連続が続きました。
色々騙されたし、色々してやられたし、最後まで罠に引っかかりました。
今回のリメイクには、勿論個人的には沢山の『不満(自分が期待していたところとは違う部分)』もありました。
ですが、それと同様に、同様以上の感動もありました。
リメイクの出来自体で言えば、いくらでも文句やああして欲しいこうして欲しいという要望は尽きません。
ですが、今回の真エンディングを見て。
そして新しいLive for Liveの懐かしいあの部分が流れた瞬間。
その直前まで、来るぞ来るぞと解っていて身構えていたんですが。
本当に自分でも思わず『ワッ』と声を上げ、涙を流していました。
私はこの曲を聴くために全力をかけてプレイしてきたんだ、ということ。
私は2X年、このEDを、この流れを見たくて、これを聴きたかったんだ。
その瞬間、自分の中で色々な感情が溢れて止まらず、キャラクターだけではなく、自分もまた『報われた』と肌で感じていました。
心の底から本当に、プレイして良かった。
心の底から本当に、LIVE A LIVEを好きで良かった。
これ程のリメイクを制作して下さったスタッフの方々、関連会社の方々には、本当に感謝の念しかありません。
ただただ、感謝の気持ちを込めて。
やっぱりフルボイスでデフォルト名の時は名前を呼んでくれよォ!!!!!!!!!(魂の叫び)
以上で、LAL今昔比較感想を終了します。
改めて、ここまで読んで頂いた方、本当にありがとうございました。
まあ次回は恐らくLALで好きなBGMについてとかになるかも知れませんが(まだ語り足りないのか…)
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Gosho Aoyama, Yoshihide Fujiwara, Osamu Ishiwata, Yoshinori Kobayashi, Ryouji Minagawa, Kazuhiko Shimamoto, Yumi Tamura
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